子どもは、ふいに聞いてくる

「男の子どうしで結婚できるの?」「◯◯ちゃんは女の子なのに、どうして"ぼく"って言うの?」——子どもは、テレビを見ているときや、友だちの話をしているときに、ふいにこうした質問をしてきます。

そんなとき、慌てなくて大丈夫です。 完ぺきな答えを用意する必要はありません。大切なのは、まず大人の側が「性はいろいろある」という土台を、ゆるやかに持っておくことです。

大人が知っておきたい「性のグラデーション」

性は、「男か女か」の2つに、きっぱり分かれているわけではありません。

じつは、性には大きく5つの側面があります。体の性、心の性、社会的な性、自分が表現する性、そして恋愛する性。この5つが、それぞれグラデーションのように連続していて、一人ひとり、持ち合わせが少しずつちがいます。

わかりやすい例で考えてみましょう。同じ「女の子」でも、可愛い服が好きな子もいれば、動きやすい服が好きな子もいますよね。どちらも、その子らしさです。それと同じように、体の性別だけで、その人の心の性別や、好きになる相手が決まるわけではありません

子どもに、どう伝える?

土台がわかると、子どもへの言葉も見つかります。伝え方の例を、いくつか紹介します。

恋愛や結婚の相手を、「異性」と決めつけない。 「将来、一緒に生きてくれる人」という言い方なら、相手が男の子でも女の子でも、自然に含められます。「男どうしでも、女どうしでも、いいんだよ」と。

制度の現実も、正直に伝える。 子どもには、「今の日本では、同じ性別どうしの結婚は、法律ではまだ認められていないんだ。でも、一緒に暮らすことはできるよ」と話せば十分です。ごまかさずに伝えることが、かえって信頼につながります。

なお、大人の理解として少し補っておきます。執筆時点(2026年)では、日本の法律上の結婚は男女間に限られていますが、多くの自治体に「パートナーシップ制度」が広がり、法律婚とは別の形で二人の関係を認める動きが進んでいます。ただしこれは、相続や税金など、法律婚と同じ効力を持つものではありません。

子どもの表現を、性別で否定しない。 たとえば、女の子が自分を「ぼく」と呼ぶことがあります。「女の子なんだからやめなさい」ではなく、「“ぼく"って言ってはいけない、という決まりはないよ」と。成長の過程で、そう呼びたい時期もあります。あわてて直させず、見守って大丈夫です。

完ぺきに答えなくていい

すべてを正しく説明できなくても、まったく問題ありません。大事なのは、否定しないこと。そして、味方でいること。「わからないことは、一緒に調べてみようね」でも、じゅうぶんです。

むしろ気をつけたいのは、大人自身の何気ない言葉です。「男のくせに」「女なんだから」——こうした言葉を、大人が日常で使わないこと。子どもは、そこから「こうあるべき」を、静かに学んでしまいます。

おわりに

子どもの「なんで?」は、多様性にふれる、またとないチャンスです。

慌てず、まず「いい質問だね」から始めてみてください。あなたが否定せずに受け止めてくれること——それ自体が、お子さんにとって、いちばんの安心になります。

ことばのせつめい

性のグラデーション
性を「男か女」の二択ではなく、体・心・社会的・表現・恋愛といった複数の側面が、それぞれ連続的に変化するものとして捉える見方です。
SOGI(ソジ)
好きになる性(性的指向)と、心の性(性自認)を合わせた言葉。特定の人だけでなく、すべての人が持つものとして性を捉える考え方です。